代表の西川喜優が、ゲストをお迎えして対談をする【Kiyuu’s Salon】
第3回目のゲストは、喜優先生のご友人であり、元JALのファーストクラスCAから英語講師・大学受験塾校長を経て起業、MBAを習得後海外ビジネススクール留学、エグゼクティブトレーナー・中小企業コンサルタント、大学講師と、幅広く御活躍の荒井弥栄さんです。
後編は日本舞踊のこと、今後やりたいこと、また世界を見てきたからこそわかった日本人の精神『〇〇』とは…? どうぞお楽しみください。

<→前編はこちら>

 日本舞踊〜お稽古〜本番

喜優:昨年の9月の初舞台で『蓬莱』を踊られたけれど、寿楽先生のところではどの位御稽古されてるの?

弥栄:月に7回位先生の御都合に合わせて、自分が行ける日に何回でも行ってよい形式。お仕事もあるから7回も行けないけど、週に1回は必ず踊るようにしています。

編集:そこまでお稽古行きたいと思うのは何でしょうか?踊ることによって発散できることとかありますか?

弥栄:発散はできないです!もっと上手に踊れればいいのですけど・・・笑 お稽古に行って踊るだけだと、先生が隣で踊ってくださるのを見ながらだけになってしまい、「あ、違う。」の繰り返しになってしまいますよね?先生から前回教えていただいた事を、ある程度できる様になってから御稽古に行かないと、先にも進めませんし、先生に対してもとても失礼だと思うのです。
ですから、毎朝4時起き後のトレーニングでステッパーを踏んでいますが、その最中にお扇子を持って日舞の曲をかけて、手の振り付けの部分だけを復習しています。ステッパーを踏みながらですから体幹もより一層鍛えられますよ。笑。
移動の車の中でも御稽古している曲をかけていますので、今は生活の中の音楽は「松の緑」ばかりです・・・笑

編集:4時起きですか!?それで復習されていると。復習にあたってお稽古の録画はもちろんダメですよね。

弥栄:4時起きなのは、仕事が早朝からが多いので、その前にトレーニングしたりするためで、もう10年以上の習慣です。時間を有効活用したいので、トレーニング中に同時に他の事もします。踊りは師匠の踊ってくださるのを見て覚えるものなので、録画はできませんね。茶道の御稽古中、御茶室で写真を撮ってはいけないのと共通するものがあると思います。

喜優:その努力がホントにすごいわよね。

弥栄:踊りが好きだからこそだと思うの。それから、出来なかったことが出来た時の喜びも大きいですし。それを一度味わうと「また次もきっと出来る」と自分を信じる力にもなるし、がんばろうと思えるから。

編集:本番の舞台はプレッシャーを感じたりしますか?

弥栄:「国立大劇場で踊るからには、絶対に失敗は許されない。師匠の顔に泥を塗るようなことは絶対にしてはいけない。」という気持ちで、御稽古も自宅での自主練もやっていました。
なにしろ、日本舞踊を始めて2年で大劇場でしたので・・・笑。当日は、師匠も何番も踊らなくてはならなかったのに、私が初舞台だったものですから、私の本番中はずっと袖で見ていてくださいました。踊っている最中に、舞台袖をフッとみたら先生がスタッフの方とお話されているのが目に入りました。「私の踊りが酷すぎたり、あまりに心配だったら、私のことをジーっと見ていらっしゃるはず。他の方とお話しされている位なので、私ちゃんと踊れているのね」と思えた位ですので、本番の舞台上では、全く緊張はしていなかったと思います。笑
翌日、御礼を申し上げに御稽古場に伺った時に先生から「例え間違ったとしても、止まったりせずに自力で先へ進める人だから大丈夫と思っていた」と、御言葉をいただきました。
寿楽先生の踊りは品格と華があり、私は日本男性で一番美しい踊りをする人だと、崇拝しています。品格のある踊りは、私が目指している最終目的地です。宝塚歌劇団や、歌舞伎座養成所、ジャニーズなど、日本のメジャーな場所で振り付けや指導をされている寿楽先生ですので、本来、私のような初心者が教えていただけるような先生ではありません。それを直々に一対一で教えていただいている以上、本当に、恥ずかしい踊りはしてはいけないと、舞台の前も、舞台が終わって新しい曲が始まっても思っています。

喜優:感覚がプロなのよね。朝4時からとか行動できる人はなかなかいないです。

弥栄:たとえ緊張したとしても、曲が始まったらもう自然と体が動いて踊れるレベルまで、体に踊りを染み込ませないといけないと、錦会に出て分かりました。当日、気持ちは全く緊張していなかったのですが、身体は緊張していたようで、先生からも「体が硬かったね」というコメントをいただきましたし、後ほどビデオを見たら、いつもよりも動きが小さかったです。
寿楽先生の社中のお浚い会「錦会」は戦後ずっと毎年国立劇場の大劇場で行われてきました。地方さんも、御衣裳も鬘も、全てが一流であるということは知られている事だったので、耳にしたことはあったのですが、なんと、初舞台の私にも人間国宝であられる長唄三味線家の杵屋勝国様が弾いてくださいました。始まる前にご挨拶に行ったら「大丈夫、大丈夫」と優しくおっしゃってくださり、実力だけでなくお人柄が伝わってくるようでした。
そして、後見さんも素晴らしい舞踊家の方がついてくださり、とても心強かったです。

編集:わかります!それ私たちもよく言っています。「こんなご立派な方々が、こんな私たちを支えてくれているんだ」という、あの頼れる感じが素敵ですよね。

 

 今後やりたいこと〜日本人の『○○』

喜優:踊りを始めたことで、生かしていきたいことってありますか?

弥栄:日舞は、茶道同様敷居が高くて入りづらいとおっしゃる人が多いですよね。今後、数年後に名取になれたとして、例えば何かのお祝いの席などで踊らせていただく機会があったとしたら、「始めて数年でも、熱心に御稽古すればこのくらい踊れるようになりますよ、仕草もきれいになるし、姿勢も良くなるし、日本の伝統の世界を知ることによって、女性としての今後に役立ちますよ」ということを伝えたいです。日舞を広めていくことに微力でも何か出来たらと思っています。自分が良い影響を受けたものは、独り占めではなくて、広く伝えたいと思います。

喜優:お名取さんの先に、また目標が見えてるのがすごいね。

弥栄:私が踊りを始めたのが50歳すぎてからだから、40代の女性の励みにもなるかな~と思ったりしています。

喜優:弥栄さんは「伝えたい」という世界観が根底にあるのよね。英語でも日舞でも。それが行動力につながっている。

編集:今、大学生に教えていて充実されているということですが、やはり「日本文化」というのは若い人たちは学んだ方が良いと思いますか?

弥栄:私はこれまで外国に多く出ていた人間ですので、日本の良さはすごくわかっていますし、逆に日本の良くない部分も分かっているつもりです。日本独自の良さの中に、日舞や茶道が入っています。これは『精進』という言葉に当てはまると思っていて、この言葉は日本人の精神にしか宿らないものではないかと思っています。日本人の強みって『精進』できる芯の強さだと思うのです。今は『精進』というと、なんか重たくて煩わしくて古いみたいなイメージになっているかもしれないけれど、実はとても清々しいものなのですよね。大きく言えば「修行」、小さく言えば「努力」になるのかしら。やはりこういうことを乗り越えて達成感を得る、という経験がとても必要だと思います。

喜優:お茶、日舞、英語もだけど、その『精進』の伝え方ってどうしたらいいでしょう?

弥栄:それをど真ん中でやっている人が伝えようとするより(つまり、御家元とか師匠と呼ばれる人とか)、別の分野の人間で、その道を知っている、ある程度のインフルエンサーが伝える方が、広域に伝わりやすいと思っています。ど真ん中でやっている方が言うと「それはあなただからでしょ」って、その時点で聞く耳を持たない場合がありますからね。
私は色々な世界を見てきたからこそ、専門でやって来た方々のことをある意味わかりやすく「通訳」できると思うのです。
ブログも13年続けていて、現在9,500人ほどの読者の方々がいてくださり、毎回のアクセスも9000~10000もいただいています。 時々商品のPRを頼まれたりすることもありますが、自分が本当に良いと思えるモノ、コトしか発信しないので、お断りすることが殆どです。読者の方も私のことをどういう人間かというのはわかってくださっていて「信頼できます」というメッセージをいただくことも多くあり、とても嬉しく思っています。

喜優:やっぱり朝早くから起きてトレーニングするとか、英語の勉強とか、ブログとか、日常やることって実は継続できる人ってなかなかいないですよ。だから「続けている」ってことが本当にすごくて、それが信頼と実績につながってるのだなと思います。

弥栄:でも、昔はそれほど続けられる人間ではなかったです。JALを辞めて塾に勤めていた40代になったばかりの頃からです。我が家の猫達のドクターの動物病院の院長先生が、お会いした時は長身で痩せていてモヤシみたいな体型だったのですけど、筋トレを始めて年々逞しい体型になっていって、3年くらい経過したら別人のような筋肉体型になっていたの。「すごい変化ですね」と言ったら「ボクね、継続することだけは得意なんですよ」とおっしゃって。その時、継続ってすごいな~と思いました。朝のトレーニングを始めたのは、この先生のおかげが大きいです。

喜優:「継続=精進」だものね。

弥栄:でもその精進は、気持ちが良いの。

喜優:それが気持ち良いって思えることが素晴らしい。

弥栄:もう今は、毎朝のトレーニングも、踊りのお稽古も、やらないと逆に気持ちが悪いですね。もちろん54歳という年齢的なこともあって体調が悪い時もあるから、どうしてもという時は無理せず、体と折り合いをつけながらになりますけれど。

編集:今までのお話を伺っていて『精進』とは、「ただの努力と根性ではない」ということですよね。

弥栄:そう、そこには「充実感」という満たされる気持ちがある。やはり多少、辛い部分はありますが、それも上達や成長には必要です。つらさがあまりに大きければ、自分がつぶれてしまう事もあると思うので、「自分を知る」ことも大事ですよね。でも自分が自分の為にしたことで、結果がゼロということは無いと思います。『精進』というのは「清々しくて、明るくて、気持ちが良くて、ちょっぴりツライけど、楽しいこと」という感じです。

喜優:その本質をちゃんとわかっているから、言う事と行動と思ってることの3つが揃うの。私はそこを見るんです。初めてお会いする人でも、長くお付き合いする人でもこの3つが揃ってる人なのかなって。スゴイと思う人は揃ってるのよね。だから表も裏もないというのが明らかだと思います。

弥栄:今は、自分が踊りを始めたからこそ、喜優さんの踊りをまた拝見したいとすごく思います。前に拝見した時とは違った見方や感情が出てくると思うので。

喜優:嬉しいです。私は御舞台に立つと「祈る」感じなの。板の上でも神社の中にいる感じ。そういうこの世じゃない世界観が好きだし、そういう世界とお客様と自分が「つながってる」というのを見て感じてもらいたい。

弥栄:舞台って、自分も立ってみて改めてわかったけど、自分を見せる場ではなく、神聖な場所だと思いますね。

喜優:古式な祈りの形って、すごく神聖な静けさの中にある。だから、一中節 (※1) はその世界なのよね。そこは『陰』で祈りを感じられるから大好きなんです。

(※1) 一中節(いっちゅうぶし)
浄瑠璃(三味線を伴奏しながら台詞と旋律で物語を進める)の一種。国の重要無形文化財。
詳細は、第2回 優葉さん後編 をぜひご覧ください

 

編集:役になりきるとか、そういう次元は超えているわけですね。

喜優:そこを目指したいと思っています。
いつも弥栄さんとお話していると、あっという間に時間が過ぎてしまいますね。とても興味深いお話ができたと思います。また続きをお話しましょう!

弥栄:はい、またぜひ!


編集後記
しっかりとした軸をお持ちで、でもそれは決して頑なではなく、自分に足りないと思う所は、謙虚に懸命に『精進』されてこられたのが、とてもよくわかりました。いくつになっても成長することを楽しんでらっしゃる姿に、私もエールを送っていただいたように思えて、また仕事もお稽古もがんばろうと思えました。
またぜひお話を伺ってみたいです。
今後の益々のご活躍を心よりお祈りしております!

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