代表の西川喜優が、ゲストをお迎えして対談をするKiyuu’ Salon
第2回目のゲストは、喜優先生のお弟子さんとなられて20年以上になるお名取の 優葉さん です。
本会前の失敗談や着物のこと、優葉さんだからこそ知る喜優先生の様々な演目ついて語っていただきました。その中でもNo.1とても貴重なお話、お楽しみください。

<前編はこちら>

 

姉弟子として 〜 本会前の失敗談

編集:お二人はそんなに長い付き合いで、年齢もそんなに変わらないのに、優葉さんはちゃんと「お弟子さん」ていう立場をきちんとわきまえてらっしゃいますよね。普通だったらもっと友達感覚になってしまいそうかなと思いまして

優葉:お師匠さんだから笑 でもそれは先生の背中を見てきたからかな。それこそ舞台の時の先生の姿勢だったりお気遣いとか見てて、学べるところは学んで、あとは私が出来ることをやるっていう感じですかね。直属の姉弟子さんがいたらもっと細かに教えていただいたかもしれないですけど、わからないことはお師匠の喜優先生に直接聞いてます。

喜優:優葉さんの姉弟子さん、お名取の方はもちろんたくさんいるんだけど、長野が多いの。東京にもいたんだけど、アメリカや大阪に行ってしまって。だから東京で聞ける人がいなかったのよね。

編集:私たちからすると、もう優葉さんはれっきとした姉弟子さんなので、6月の本会(※5)の時も、ほとんどの人が初めての本会で、用意するものとか教えてくださって本当にありがたかったなと思います。

(※5) 6月の本会
3年に一度行われる「調布日本舞踊公演」。習い始めの方から名取、師匠まで一同が出演する。
舞台セット、照明、衣装、演奏などプロの方々にやっていただける貴重で大きな会。

 

喜優:門下生の皆さんも、会とか出てくださることによって、いろいろなことを覚えていくからね。

優葉:でも私、失敗談も多いんですよ笑 本会の下浚い(リハーサル)の時に、洋服で行ったりとか。浴衣しか持って行かなかったから、帯を急遽、他の先生から借りたりとかありました(※6)

(※6) 基本的に「本会」と言われる3年に一度の大きな舞台「日本舞踊公演」をはじめ、発表会など舞台に立つ会の時は、リハーサルと本番の日は会場へ行く時から着物(訪問着か付下げ)を着ていくのが儀礼となっています。

 

喜優:あーそうだったっけ笑

優葉:(喜優先生にとっては当たり前すぎて)もう私がわかってるものだと思ってらしたと思うんですけど、全然わかってなかったら普通に服とバッグに浴衣入れて行っちゃいました。そこからの学びで今があります笑

編集:そのおかげで、私たちも洋服で行かなくて済みました笑

 

着物・ 髪型について

編集:着物は、元々興味はあったんですか?

優葉:なかったです笑 成人式も洋服で行ったくらい。祖母たちは嘆いてましたけど。それがいいって時代でしたね。始めはとんでもないの買っちゃったりして失敗してましたけど笑 銀座のママさんの降りてきたやつかなとか。

編集:わかります。私も最初は自分がどういうものを着ていいのかって、全然わからなかったです。

優葉:洋服感覚とも違いますしね。だから先生が着てるのを見たり、譲っていただいたりしてありがたいです。

編集:今日のお着物のコンセプトは何ですか?

優葉:能舞台ということで、かしこまった感じで。あと季節柄、紅葉があるので。(インタビューは10月末)あと、喜優先生からいただいたこの帯を締めたかったので、これにしました。

喜優:なんにでも合うから。お着物も今日の能舞台にすごい映えてね。

優葉:少しずつ「あ、こういうのが自分でも落ち着く」とかわかってきて。でも地味なものばっかりになっちゃうんですけど。派手なのも着てみたいと思うんですけど、それはお衣装でいいかなと笑 でもいろんな方の着物見てると勉強になりますね。帯揚げとか帯締めの色変えるだけで違ってきたり、反対色とかもそれが合ってたりするし。

喜優:お洋服ではできない合わせ方ができますよね。

優葉:着られるようになって、ちょっとした時にお着物で行くと喜ばれますよね。だんだん年代重ねてくると、お洋服のよそ行きはどうしたらいいんだろうって思うけど、着物だとしっくりくるからとても良いですよね。
母方の祖母が山梨で、絹物の卸問屋の娘で母がけっこう着物作ってもらってるんですけど身長が150㎝ないんですよ。それこそウールの着物なんかもあったり、しつけ糸がしたまま置いてあって。

喜優:でもお母様もそういう環境で。

優葉:実は踊りやってたんですよ、花柳流で。あと小唄は一応免許持ってて、でもまったく聞いたことないんですけど。

喜優:えー!そうだったの。お母様も和の世界はあったのね。

喜優:お着物はシックなものが好きと。髪とかは?

優葉:私の場合あんまり盛ると迫力出ちゃうかなと思うので。お髪はまだ模索中でいろいろ試してみたいです。

喜優:髪型も好みってあると思うんだけど、髪も作られていくのを見てるとアートだよね。だから私の会ではそういうのも楽しんでもらったり、自分発見のひとつにしてもらいたいし、髪は額縁だと思うからね。でも優葉さん、いつも自分でキレイにしてるよね、編み込みしたり器用だよね。

優葉:先生にいろいろ連れて行っていただく中で、いろんな方のを見たり、もちろん喜優先生のを見たり、出来る範囲でやってますね。でもこういうのも楽しいですよね。

喜優:やっぱり女性として楽しいよね。お仕事柄、非日常な部分もあるだろうし。

優葉:ホントそこですね。仕事はもう現実なので。

喜優:踊るときは「日常を離れて没頭できる」といつもおっしゃってくださってるのは本当に嬉しい。ただ踊りの型とか、振りとか口伝を教えるだけじゃなくて、日本舞踊が心の部分の支えになれてるんだと思うと、この世界にいる者としてはすごい嬉しいです。他の皆さんもそれぞれ大変な中でお稽古来てたりするから、一緒にいられる時間が、波動とか気で感じ合う時間にしたい。それがきっと楽しんで、良い仲間になってつながっていくと思うから。

優葉:だんだんと東京チームができてきて嬉しいです。今までわりと一人で寂しかったので笑 たまにカルチャーの所でお稽古つけてもらう時があって、お稽古終わりに皆さんベンチのところで楽しそうにお話しされてて、楽しそうだなと思います。

喜優:団体の良さだよね。

 

様々な演目 〜 好きな踊り

喜優:プロの方々にばっかり囲まれてきた20年でしたね。

優葉:日本の文化の見方が変わったと思います。奥深さですかね。本会の時でも 床山さんとか私のような素人のために、ちゃんとした人がちゃんとあつらえてくださいますし。僭越ながら、職場の人にもこういうちょっとした話ができることも継承なのかな。

喜優:前に、タップダンサーのKENTAさんと私と、都了中さんとあと新宿区の経王寺という大黒天のお寺さんのご住職、その4人で作り上げた演目があるのね。『縁 〜えにし〜』というんだけど、そのご住職の観章さんが脚本と語り部をして、私が女性役でKENTAさんが相手の男性役。古今集の中の一つの話で、私が踊るところを了中さんが弾いたり語ったりして、KENTAさんがタップで気持ちを表現するという。一言で説明できないんだけど、それを経王寺さんのイベントでそれをやりたいって話があってそれでご縁があって集まった4人だったの。そこから感性がみんな同じ方向向いているから話が合うわけよ。ここもっとこうしてみるとか本当に作り上げた感じ。

優葉:タップと日舞ってえーって思ったんですけど、すごいしっくりきて、皆さんプロの集まりだから多才ですごい素敵でした。またその楽しい方々からまた影響受けたことも多くて、了中さんの会の時に落語家さんとコラボする会があって、お腹抱えるくらい面白くて、すごい所作がきれいな落語家さんで日舞もやってると聞いて。追っかけのように落語行ってました。

喜優:これからはどんな踊りとか踊っていきたいですか?好きな踊りとか。

優葉:いつも先生から何するって聞かれるんですけど、他の皆さんは何やりたいっておっしゃるみたいなんですけど、なかなかそこまでいかれなくて、いつも先生にお任せしてます。

喜優:どっちかって言うと優葉さんはクラシックな踊り、現代的なものよりは古い雰囲気のほうが好きなのかなあ。

優葉:先生みたいに悲恋の踊りとかもゆくゆくは笑 と思いますけど、あれは雰囲気が出せないとねーっていう笑 でもいつか廓ものもやってみたい気持ちもあります。

喜優:ぜひチャレンジして。チャレンジしてるうちに、そういうやりたいものも出てくるし。

優葉:先生の演目で、私の今のところのナンバーワンは『家桜傾城姿(いえざくらけいせいすがた)』ですね。

喜優:何回かやってて、もう前になるけど国立劇場でもやってるかな。

優葉:一中先生、了中先生とお3人で何回もやってるから、3人の良い空気感がもうできてらっしゃるからいいんですよー。本会で踊られた『松風』素敵でしたって了中先生にお伝えしたら、「喜優さんとの舞台は特別なんですよ」っておっしゃってて、弟子として喜優先生を大切に思ってくださってるんだなと嬉しく思いました。

喜優:お互いに特別って思っていて、一中先生、了中先生との時間を増やしたいと思ってるんだけど。だから余計に一中節の演目は大事にしたいというのがあって。

編集:勉強不足で大変恐縮なのですが、一中節とはどのようなものなんですか?

喜優:もともと初代の一中さんは京都のお坊さんだったのね。一中節を語ることは、お経をあげているのと同じような効能があって、祈りの世界から来てるの。だから悲恋ものとか、能にちなんだ演目とかが多い。地唄も多いんだけど。だからどっちかって言うと一中節は『陰』ていうか『静』の要素なんだよね。一中節の先生方も『音が消える瞬間』『音がない行間の部分』が大事ということをいつも話してくださってる。

編集:古典も古典て感じなんですね。

喜優:クラシックもクラシックって感じ笑 そんな華やかに踊るものじゃないからシンプルにっていうね。

編集:(振付で)立ってるだけ、とかありますけど、その『静』の中で、その演じてる方からどれだけ感じられるかっていうのはありますよね。先生はそれがすごいんでしょうね。

優葉:スゴイんですよー。

喜優:いやいや。でも好きなんでね、そういう世界が。松風も家桜も、人間と霊の間のところなんですよ。あの世の途中の所の話なの。神ではないんですよ。悲しみを秘めた女性が霊として現れる、その世界が好きなんだよねきっと。

編集:確かに『松風』を見たときに、先生が出てきた途端「あ、人間じゃないな」って思いました。

優葉:あと珍しく男性とペアで踊る『椀久道行(わんきゅうみちゆき)』も素敵です。

喜優:同じお流儀の、西川大樹先生をゲストにお迎えした会で何をやるかってなって、一中節で何かある?って聞いてみたら、了中先生が「椀久道行っていうのがありますよ」とおっしゃって。でも振付がなかったのね。だから大樹先生とお互いに自分のところは自分で振り付けをして、二人共通のところは大樹先生にお任せして踊ったんだよね。

優葉:喜優先生が一人で踊られるのはよく見ていたので、男性と一緒に踊るっていうのが新鮮で、また恋模様とかも表されて素敵でした。大樹先生の男性ならではの跳躍力と三番叟とかも、すごい迫力がありました。

喜優:大樹先生とは『蝶の道行』もやってるの。最後、先に男の蝶が倒れて死んでしまって、その周りを女の蝶が守るように舞いながら、最後は力尽きて男の蝶に覆い被さって死んでしまうんだけど、その時、母性愛というか大きな愛みたいのを感じながら踊っていたのね。それが幻想的ですごい好きなんだよね。

優葉:三味線の調べもいいですよね、義太夫独特の色っぽさがあって。

編集:いやーまだまだ私の知らない世界がたくさんありますね。とにかく全部見てみたい!コロナが落ち着いたら、先生も踊られる機会もまたたくさん出てくるでしょうから、ぜひ生で見たいです。

喜優:やっぱり生が一番いいですよね。

優葉:喜優先生を本当にいろんな人に見てもらいたいですよね。

喜優:では益々精進していただいて。優葉さんは私の片腕でもあり、皆さんの先輩でもありますからね。


編集後期
優葉さんへのインタビューなのですが、終始、喜優先生を始め、たくさんのプロフェッショナルな皆様への尊敬と配慮が感じられました。優葉さんだからこそ知っている、喜優先生の踊りの様々な演目など、大変奥深いお話も伺えてまた貴重な会になったと思います。

お名取になって嬉しいという気持ちよりも、改めて「名取として見られるプレッシャー」をお感じになっている所に、優葉さんにもプロフェッショナル魂が宿っていると思いました。妹弟子として、見習っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします!

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